柔らかくて慎ましい この国の「仕合わせ」を謳う 「糸」 中島みゆき


表題がそうであるように
素敵な(きれいな)言葉が
並んでいます

とても繊細に 言葉を
選んでいる 印象です

 特に 印象的なのは
「逢う」と「仕合わせ」

「会う」ではなく「逢う」
「幸せ」ではなく「仕合わせ」

同じ使い方も
可能なはずなのに
あえて選んで・・・

そうして みていると
平仮名にも・・・
あえて 漢字としないことに

「めぐり(逢う)」
「ふたり」
「ころんだ」
「ふるえてた」
「かばう」
そして
「あなた」

共通しているのは
原点に返るような・・・
初心に帰るような・・・
そんな意識です

そのこだわりは
歌詞全体を
柔らかく 懐かしく
しているような 気がして
この詩の 世界観に
惹きこまれてしまうんです

この詩を 読んでいると
起承「転」結の並びが あって
素直に 気持ちが 伝わります

「遠い空の下」にいる
「ふたり」の「赤い糸」

「出逢うふたり」を
「糸」に 例えたところが
この歌詞の 素晴らしさの
象徴だと思います

横の糸を
「私」にしていることは
日本人の 慎ましさを
表していて
微笑ましくて・・・

「横」は
受け身というか
へりくだる姿勢みたいなものを感じ
相手を 敬うような
印象を受けます

「縦」は
「立身」の印象で
あなたに そうあって欲しい
そんな 羨望を
含んでいるような・・・

糸には
強さと 弱さ(儚さ)の 両面があって
「人」に 例える言葉として 相応しくて・・・

しかも
生活感のある 素材でもあって
この歌詞への 親近感も 湧いてきます


中盤の「迷い」「挫折」する「糸」が
風の中で 心許なくて ふるえる描写は
共感できる「転」になっています

ここは
歌詞全体の アクセントになっていて
最後の「仕合わせ」を強調する
役目を 担っているような気がします


そして
この曲は
結婚を 祝うために作られた
と されています

逢うべき糸に 出会えること
どこにいたの 生きてきたの

「出逢う以前」の「あなた」への
愛しさをも 感じさせる
この詩の世界観に共感します


そして
特定の個人の仕合わせを
歌っている印象ですが
普遍的な
静謐さみたいなものまで 感じられて
あなたと 私に 限定されない
もっと 大きな力も
あるような気がしています



もうひとつ
感じたことがあります

ここからは
作詞者の意図から逸脱した
勝手な想像です


「遠い空の下」
「あなた」

「あなた」が
「山のあなた」に聴こえてきて・・・
「山のあなたの空遠く・・・」です

「あなた」を「貴方」でなく
平仮名としたのは
歌詞全体に
柔らかさを
与えるため
と思いますが
「あなた」は「彼方」を
示唆したものと考えてみます

空間と時間を超えた
ふたつの「あなた(彼方)」

そこには
実は「仕合わせ」は
ありません

しかし
この ふたりには それがあること
を 伝えています

「遠い空の下(彼方)」にある
 「あなた(貴方)」との「仕合わせ」

「過去や未来(彼方)」にある
 「あなた(貴方)」との「仕合わせ」

誰かを暖めうるほど
誰かの傷を癒せるほど
永い時間
添い遂げられる
逢うべき糸に出逢えたこと

それこそが

ふたりが迎えた「仕合わせ」・・・

「遠い空の下」にいた
 これまでの「あなた」へ

これから永い時間を
 共に過ごしていく「あなた」へ

共に 強く 儚い糸でも
永い時間を 過ごすことが
約束された ふたりだから
小さくても
暖かい布(ささやかな仕合わせ)を
織りあげて(築いて)いきましょう・・・

この歌の 成り立ちを
考えると「仕合わせ」は必然ですが
結婚を 迎える二人を
より祝福するために
出逢うべくして
出逢った「仕合わせ」を称え
祝賀を 届ける歌として・・・

「 どこにいたの 生きてきたの
  遠い空の下 ふたつの物語 」

「 これからは共に 生きていきましょう
  同じ空の下
   築いていく物語は ひとつです 」

「あなた」こそ
 これから ふたりで
 築いていく「仕合わせ」


今まさに
 スタートする おふたり へ
 敬意を表して・・・

そんな メッセージが
織り込まれていることを
想像しています





糸 歌詞

なぜ めぐり逢うのかを
私たちは なにも知らない
いつ めぐり逢うのかを
私たちは いつも知らない
どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語

縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かを
暖めうるかもしれない

なぜ 生きてゆくのかを
迷った日の跡の ささくれ
夢追いかけ走って
ころんだ日の跡の ささくれ
こんな糸が なんになるの
心許なくて ふるえてた風の中

縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かの
傷をかばうかもしれない

縦の糸はあなた 横の糸は私
逢うべき糸に 出逢えることを
人は 仕合わせと呼びます





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